「経理の話になると、途端に頭が痛くなる・・・」
こういった電気工事経営者の方も多いのではないでしょうか。
それもそのはずで、電気工事業を始めとする建設業は、とにかくお金の出入りが激しく複雑な業界の一つです。
施工するために協力会社に外注依頼を出し、支出も発生しているのに肝心の元請からの入金は3か月後・・・。
前受金を3割分頂けたのに他の案件を進めるための資金に充ててしまった・・・。
中には施工までしたのに発注書が中々出されず、結局その後どうなったかわからなくなってしまった・・・。
上記のような話は建設業だと割とよく聞く話だと思いますが、これは産業全体でみるとかなり特殊な構造です。
設備工事業は毎年200社~300社が倒産している
(株)帝国データバンクの全国企業倒産集計(https://www.tdb.co.jp/tosan/syukei/pdf/19nen.pdf)によると、建設業は毎年1,400社~1,500社程度、設備工事業は毎年200社~300社程度の企業が倒産しています。
ここ5年は減少傾向にありますが、それでもゼロにはならず、毎年倒産する企業が後を絶ちません。
理由はいくつかありますが、最も多い理由が不況型倒産(販売不振や売掛金回収難、不良債権の累積等)で、2019年に倒産した企業のうち79.2%が不況型倒産でした。
電気工事業には、工事業界ならではの勘定科目が2つあります。
①未成工事受入金
②未成工事支出金
これは、電気工事業界をはじめとする建設業界の「支出と収入のタイミングが物件により異なる」という特徴により生まれた勘定科目です。
この「支出と収入のタイミングが物件により異なる」という特徴が電気工事業界の経理を難しくしている理由の一つです。
電気工事業界の特性に合わせた勘定科目ですので、理解するまでは難しいですが、案件ごとに未成工事受入金や未成工事支出金を明確にできると自社内の資金状況がとても分かりやすくなります。
逆に、これらを把握せずにどんぶり勘定で計算をしていると、最悪の場合資金が底をつき、倒産ということになりかねません。
それではまず、未成工事受入金について解説します。
未成工事受入金とは、「まだ完成していない工事の前受金」のことです。
完工していないのに手元にお金がある状態です。
新築の住宅やリフォーム工事等では契約時に契約金として総額の一部を、ゼネコン等からの下請け工事の場合には出来高として工事代金の一部を受領することがあるかと思いますが、これらが未成工事受入金となります。
未成工事受入金は工事の完成時に完成工事高として計上します。
この未成工事受入金を勘定科目として追えていない電気工事会社では、得意先への請求高や入金高を全て売上として処理している場合があります。
そうではなく、未成工事受入金が支払われた期と完工の期が決算をまたぐ場合、未成工事受入金は貸借対照表上では負債として勘定します。
次に、未成工事支出金について解説します。
未成工事支出金とは、「まだ完成していない工事の支出金」のことです。
完工していないのに支出が発生している状態です。
まだ完工していない状態で発生した材料費や労務費、外注費、経費が未成工事支出金に当たります。
税理士の方によっては仕掛工事という勘定科目で取り扱う場合があります。
この未成工事支出金の計上漏れは税務調査でも指摘され、修正申告を余儀なくされます。
未成工事支出金が発生した期と完工の期が決算をまたぐ場合、未成工事支出金は資産として計上されることになります。
いかがでしたでしょうか。
電気工事業に関わらず、全ての業界に共通することですが、自社を長続きさせるためにもっとも大切なのは資金繰りです。
その第一歩として勘定科目の明確化、各勘定科目の見える化が重要です。
ぜひ貴社の経理でも参考にして頂ければ幸いです。